Q.59(Lim_Rim_氏 作)を解いてみるだけ
数学の問題をたくさん作っていらっしゃるLim_Rim_さんが、以前こんな問題を投げていました。
追記:最高次の係数は$1$です。*1
Q.59 ☆7 (N+Al) pic.twitter.com/Bwy2ambt5E
— 自作数学問題bot by L (@L_jisaku) 2019年3月29日
書き起こしたものがこちら
(a) 方程式$f(x)=0$の解はすべて素数であり、$7$は解に含まれる
(b) 極大値および極小値が存在し、それらの和は$0$である
(c) $f'(0)$は素数
$f(x)$を決定せよ。
非常に興味深かったので解いてみたんですが、なかなかに面白かったので答えをシェアしようと思います。
気になった方はぜひご自分の手で解いてみてください。
解答の流れ
ということで実際に解いてみます。
三次関数のグラフは点対称*2であり、条件(b)よりその対称の中心となる点は$x$軸上にあることがわかる。このことから、方程式$f(x)=0$の3つの解は等差数列をなす。
条件(a)より解の一つは$7$であるため、残りの解を$p, q$とおく。
このとき、最高次の係数は$1$であることから、$$
f(x) = (x-7)(x-p)(x-q)
$$である。両辺微分して$$
f'(x) = (x-p)(x-q)+(x-7)(x-q)+(x-p)(x-q)
$$なので、$$
f'(0)=pq+7q+7p
$$である。
以上より、
- $p, q$はともに素数
- $7, p, q$は小さい順に並べたときに等差数列をなす
- $pq+7q+7p$は素数
を満たすような$p, q$を求めれば良い。
以下、$p \lt q$とし、$7$との大小関係で場合分けを行う。
条件(b)から、3つの解は等差数列をなしているという非常に重大なことがわかりました。
しかもその全てが素数であり、1つは$7$という具体的な値が決まっています。
これから、残りの2つの数と$7$との大小で場合分けを行って$f(x)$を決定していきます。
$7$より小さい素数は$2,3,5$しかないため、最初の2つの場合分けは調べるだけなので楽勝です。
$p, q, 7$の順に等差数列をなす素数$p, q$は、$(p,q)=(3,5)$のみ。
このとき、\begin{eqnarray}
f'(0) &=& 3\cdot 5 + 7 \cdot 5 + 7 \cdot 3\\
&=& 15+35+21\\
&=& 71
\end{eqnarray}$71$は素数であるため、条件を満たしている。
めでたく1つ見つかりました。この調子で残りの場合分けも行きましょう。
$p, 7, q$の順に等差数列をなす素数$p, q$は、$(p, q)=(3,11)$のみ。
このとき、\begin{eqnarray}
f'(0) &=& 3\cdot 11 + 7 \cdot 11 + 7 \cdot 3\\
&=& 33+77+21\\
&=& 131
\end{eqnarray}$131$は素数であるため、条件を満たしている。
このときも1つ見つかりました。
最後は$7 \lt p \lt q$のときですが、このときが一番厄介です。
なぜなら、$7, p, q$の順に等差数列をなす素数$p,q$はたくさんあるからです*3。
しかしながら、いくつか調べてみると素数$p,q$を持ってきても$f'(0)$が全然素数になってくれません。
$7$ | $p$ | $q$ | $f'(0)$ | $f'(0)$の素因数分解 |
$7$ | $13$ | $19$ | $471$ | $3\cdot 157$ |
$7$ | $19$ | $31$ | $939$ | $3 \cdot 313$ |
$7$ | $37$ | $67$ | $3207$ | $3 \cdot 1059$ |
$7$ | $67$ | $127$ | $9867$ | $3 \cdot 11 \cdot 13 \cdot 23$ |
$7$ | $73$ | $139$ | $11631$ | $3 \cdot 3877$ |
どうも$3$の倍数になってるっぽいことが目に見てわかります。$3 \cdot 3877$なんでいかにも確信犯じゃないですか。
ということで、$f'(0)=pq+7q+7p$が$3$の倍数でないというところから矛盾を導き、$7 \lt p \lt q$のときに条件を満たす素数$p, q$は存在しないことを示します*4。
そもそも$f'(0)$は素数になってほしかったのですから、$f'(0)$が$3$の倍数でないという仮定はごもっともですね。
$7, p, q$の順に等差数列をなしているため、$$
2p=7+q
$$という関係が成り立っている。
これより$f'(0)=pq+7q+7p$を$3$で割ったあまりで場合分けを行う。
以下、合同式の法は$3$とする。
(I) $pq+7q+7p \equiv 1$のとき
\begin{eqnarray}
pq+q+p &\equiv& 1 \\
(p+1)(q+1)&\equiv& 2\\
(p+1)(2p-7+1) &\equiv& 2\\
(p+1)(2p-6) &\equiv& 2 \\
2(p+1)(p-3) &\equiv& 2\\
(p+1)(p-3) &\equiv& 1 \\
p(p+1) &\equiv& 1
\end{eqnarray}これは連続する2つの自然数の積が$3$で割り切れないことを表している。つまり、$$
p \equiv 1
$$である必要がある。このとき、$$
p+1 \equiv 2
$$であることから、$$
p(p+1) \equiv 2
$$となるが、これは矛盾。
よって、$pq+7q+7p \not\equiv 1$である。
順調です。$pq+7q+7p \equiv 1$ではないことがわかりました。
次はあまりを$2$にして進めましょうか。
$2 \equiv -1$なので$pq+7q+7p \equiv -1$と仮定してみましょう。
(II) $pq+7q+7p \equiv -1$のとき
\begin{eqnarray}
pq+q+p &\equiv& -1 \\
(p+1)(q+1)&\equiv& 0\\
(p+1)(2p-7+1) &\equiv& 0\\
(p+1)(2p-6) &\equiv& 0 \\
2(p+1)(p-3) &\equiv& 0\\
(p+1)(p-3) &\equiv& 0 \\
p(p+1) &\equiv& 0
\end{eqnarray}これは連続する2つの自然数の積が$3$で割り切れることを表している。すなわち$p$または$p+1$の一方は$3$の倍数である。
$p$は素数であるため、$p+1$が$3$の倍数。
このとき、$$
p+1 \equiv 0
$$であるが、$2p=7+q$を用いて\begin{eqnarray}
p &\equiv& -1 \\
2p &\equiv& -2\\
7+q &\equiv& 1\\
q &\equiv& -6 \\
q &\equiv& 0
\end{eqnarray}が得られる。つまり、$q$は$3$の倍数であるが、これは矛盾。
よって、$pq+7q+7p \not\equiv -1$である。
(I), (II)より$$f'(0)=pq+7q+7p \equiv 0$$であり、$f'(0)$が$3$の倍数であることがわかる。$f'(0)$は明らかに$3$より大きいことから、$f'(0)$は素数ではない。
つまり、$7 \lt p \lt q$のときは$f'(0)$は素数になり得ない。
やはり$7 \lt p \lt q$のときは、等差数列をなす$p, q$が見つかったとしても$f'(0)=pq+7q+7p$は素数になってはくれないようです。
まとめましょう。
f(x)&=&(x-3)(x-5)(x-7)\\
f(x)&=&(x-3)(x-7)(x-11)
\end{eqnarray}である。
まとめ
個人的エモポイントをまとめます。
- 極大値と極小値の和が$0$になることから、$f(x)=0$の3つの解が等差数列になるということがわかる。
- $7 \lt p \lt q$のときにも$f'(0)$が素数になってくれても良さそうなのに、見事に全部$3$の倍数だった。
- (iii)(II)で、$p$が$3$の倍数でないと思ったら$q$が$3$の倍数だった。
$\mod$を使う問題は何を法にするかで迷って泥沼という経験が何度もありますが、「全部$3$の倍数ー!せや!法を$3$にして場合分けしたろ!」と気づき、実際に矛盾を導き出せたのが個人的に嬉しかったですね。
以上です。
また何か面白い問題を解いたらシェアします。それでは。
*1:この条件が無いと答えが無限に出てきてしまうので、制作者本人に確認しました。
*2:自明かもしれないですが、少なくとも僕はこれに気づかずしばらく泥沼でした。証明はそんなに難しくないのでまた別記事で書こうと思っています。
*3:そのような素数$p,q$が無限個あるかはわかりません。どうなんだろう?
*4:僕が実際に行った証明は、「$p,q$が素数で$7,p,q$の順に等差数列が成り立っているならば$pq+7q+7p$は$3$の倍数」の対偶をとり、「$pq+7q+7p$が$3$の倍数でないならば$2p \neq 7+q$ または $p$は素数でない または $q$は素数でない」という論理の流れがクソややこしい方法でやっていました。