三次関数のグラフの対称性を初めて調べた話

グラフには直線や放物線などがあるのはご存知だと思います。
直線は例えば$y=2x$みたいな一次式で表されるものですし、放物線は$y=x^2+x-1$のような二次式で表されるものがそうです。

$y=2x$のグラフ

$y=x^2+x-1$のグラフ

どちらのグラフもとても高い対称性があることがひと目でわかります。

一次関数の$y=2x$は直線上の点について点対称ですし、二次関数の$y=x^2+x-1$は軸について線対称ですね。

ここで気になるのが、三次関数の対称性です。

なんとなく「点対称っぽいな〜〜」とは感じていたのですが、自分の手で確かめたことが無かったのであやふやだったんですよね。
ということで調べてみました。

ビジュアライズ

初めにネタバレしますが、三次関数は点対称です

いきなり証明に入っても堅苦しいので、実際にいじって遊んでみたものをご覧いただきましょう。
$y=ax^3+bx^2+cx+d$(ただし$a \neq 0$)の$a,b,c,d$の値をグリグリ動かしてもずっと点対称だよ〜〜〜というアニメーションです。

楽しい!!

平行移動

この証明のポイントは、平行移動です。
平行移動とは、簡単に言えばグラフを形はそのままに上下左右に動かす、といったものです。拡大縮小や回転は行いません。

そしてこの平行移動ですが、どんな関数$y=f(x)$を持ってきても\begin{eqnarray}
x &\longrightarrow& x - a \\
y &\longrightarrow& y - b \\
\end{eqnarray}と置き換えることで$x$方向に$a$、$y$方向に$b$だけ平行移動することができます
これからまず$y=ax^3+bx^2+cx+d$に適切な平行移動を行うことで、$x^2$の項と定数の項を消します

以後、いちいち断るのは面倒なので$a\neq 0$とします。(そもそもそうしないと三次関数ではない)

\begin{eqnarray}
y &=& ax^3+bx^2+cx+d \\
y-d &=& a\left( x^3 + \frac{b}{a}x^2 + \frac{c}{a} x \right)
\end{eqnarray}
ここで、$(x+p)^3$を展開したときに$\frac{b}{a}x^2$が出てくるようにうまいこと$p$を決めます。$$
(x+p)^3 = x^3+3px^2+3p^2x+p^3
$$なので、$$
p=\frac{b}{3a}
$$とすれば良さそうですね。展開するときに出てくる余分な項もちゃんと打ち消してあげましょう。$$
x^3+\frac{b}{a}x^2 = \left( x+\frac{b}{3a} \right)^3 - 3\left( \frac{b}{3a} \right)^2 x - \left( \frac{b}{3a} \right)^3
$$
続けます。
\begin{eqnarray}
y-d &=& a\left( x^3 + \frac{b}{a}x^2 + \frac{c}{a} x \right)\\
y-d &=& a\left( \left( x+\frac{b}{3a} \right)^3 - 3\left( \frac{b}{3a} \right)^2 x - \left( \frac{b}{3a} \right)^3 + \frac{c}{a} x \right)
\end{eqnarray}
ここで、$$
X = x + \frac{b}{3a}
$$とおくと、\begin{eqnarray}
y-d &=& a\left( X^3 - 3\left( \frac{b}{3a} \right)^2 \left( X - \frac{b}{3a} \right) - \left( \frac{b}{3a} \right)^3 + \frac{c}{a} \left( X - \frac{b}{3a} \right) \right)\\
y-d &=& a\left( X^3 - 3\left( \frac{b}{3a} \right)^2 X + 3\left( \frac{b}{3a} \right)^3 - \left( \frac{b}{3a} \right)^3 + \frac{c}{a} X - \frac{bc}{3a^2} \right)\\
y-d &=& a\left( X^3 + \left( \frac{c}{a} - \frac{b^2}{3a^2} \right) X + 2\left( \frac{b}{3a} \right)^3 - \frac{bc}{3a^2} \right)\\
y-d &=& aX^3 + \left( c - \frac{b^2}{3a} \right) X + \frac{2b^3}{27a^2} - \frac{bc}{3a}
\end{eqnarray}となる。よって\begin{eqnarray}
Y &=& y - \frac{2b^3}{27a^2} + \frac{bc}{3a} - d\\
q &=& c - \frac{b^2}{3a}
\end{eqnarray}とおけば、$$
Y = aX^3 + qX
$$となる。これは奇関数なので、グラフは点対称である。

よって、平行移動する前のもとのグラフも点対称である。

はい。式変形がかなりややこしいことになっていますが、もうちょっとざっくり言いますと
$$
y = ax^3 + bx^2 + cx + d
$$というグラフは、\begin{eqnarray}
X &=& x + \frac{b}{3a} \\
Y &=& y - \frac{2b^3}{27a^2} + \frac{bc}{3a} - d
\end{eqnarray}というふうに平行移動することで$$
Y = aX^3 + qX
$$というシンプルな形になる。($q = c - \frac{b^2}{3a}$)
ということを言ってます。平行移動する量や$q$の値もちょっとややこしく見えますが、所詮$a,b,c,d$しか用いていないため、もとのグラフごとに決まるただの定数です。恐れることはないです。

そして、平行移動したあとの$Y = aX^3 + qX$ですが、奇関数という性質を持つ関数です。
奇関数とは$f(-x) = -f(x)$という関係を満たす関数$f(x)$のことを言いますが、これもざっくり言いますと(原点に対して)点対称であるということです。

以上のことから、
平行移動したグラフが奇関数で点対称だったので、もとのグラフも点対称である
ことがわかりました。

まとめ

「三次関数、点対称っぽいな〜」というぼんやりした考えを持っていましたが、こうやって自分の手で証明するとこれから自信をもって使えますね。

三次関数は極値も一緒に考えるともっといろんな性質もあるようです。
今回の参考文献としてこのサイトを貼っておきます。
mathtrain.jp

今回はこのあたりで。それでは。