ランベルトの連分数を頑張って導出してみた
本記事は数学〈超絶〉難問のQ73について書きます。
- 作者: 小野田博一
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2014/05/22
- メディア: 単行本
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Q.73 『ランベルトの連分数』
$$
\tan x = \frac{x}{1-\frac{x^2}{3-\frac{x^2}{5-\frac{x^2}{7-\frac{x^2}{9-\cdots}}}}}
$$
これは1766年に J. H. Lambert(1728年〜1777年)が発見した,有名な連分数です。
あなたはこれを導けますか?
ざっくりとした方針
求める連分数は次のステップで求めることができます。
- はだよね
- とは無限級数で表すことができるよね
- それを式変形すればできるよ
ざっくりと書いてしまいましたが、3.のステップが尋常じゃなくしんどいです。
合っている計算をしていてもこれでいいのかと不安になってノートめっちゃ使いました。
もうちょっと効率よく
連分数を見ると、こんな構造になっていることがわかります$$
\tan x = \frac{x}{\text{(奇数)}-\frac{x^2}{\text{(次の奇数)}-\frac{x^2}{\text{(次の次の奇数)}-\cdots}}}
$$つまり、次のような式を満たすの関数が見つかれば、少しは楽になるのでは??$$
f_n(x)=2n+1-\frac{x^2}{f_{n+1}(x)}
$$
すると次の2つが示せれば大丈夫そうでしょう。たぶん。
- を設定し、を満たすことを示す。
- となることを示す。
以上の2つが示すことができれば、次のような式変形によってランベルトの連分数を作ることができます。やったね!\begin{align}
\tan x &= \frac{x}{f_0(x)}\\
&=\frac{x}{1-\frac{x^2}{f_1(x)}}\\
&=\frac{x}{1-\frac{x^2}{3-\frac{x^2}{f_2(x)}}}\\
&=\frac{x}{1-\frac{x^2}{3-\frac{x^2}{5-\frac{x^2}{f_3(x)}}}}\\
&=\cdots
\end{align}
って何よ
見つけました。というか、あたりまで頑張って式変形をして予想しました。
式変形をこのブログに書くには狭すぎるので、割愛させてください。
というかtex形式であんな巨大な式を書きたくない。
はこちらです!ドン!!$$
f_n(x)=\frac{\sum_{k=0}^\infty \frac{1}{(2k+1+2n-2)(2k+1+2n-4)(2k+1-2n-6)\cdots(2k+1)}\frac{(-1)^k}{(2k)!}x^{2k}}{\sum_{k=0}^\infty \frac{1}{(2k+1+2n-0)(2k+1+2n-2)(2k+1+2n-4)\cdots(2k+1)}\frac{(-1)^k}{(2k)!}x^{2k}}
$$ヤバそう
分母分子の中にある巨大な分数ですが、分母は(または)からまで1つおきの値を全て掛け算したものになっています*1。分母のほうが一つだけ多いです。
ヤバそうな式ですが、これ、実際にを満たします。
計算はみなさんに託します。これもtex形式で書きたくない…
そんなに難しくないよ
はじめの一歩
やのマクローリン展開の逆を使うと、こうなります。\begin{align}
f_0(x)&=\frac{\sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k}{(2k)!}x^{2k}}{\sum_{k=0}^\infty \frac{1}{2k+1}\frac{(-1)^k}{(2k)!}x^{2k}}\\
&=\frac{\sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k}{(2k)!}x^{2k}}{\sum_{k=0}^\infty\frac{(-1)^k}{(2k+1)!}x^{2k}}\\
&=\frac{x}{1}\cdot\frac{\sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k}{(2k)!}x^{2k}}{\sum_{k=0}^\infty\frac{(-1)^k}{(2k+1)!}x^{2k+1}}\\
&=\frac{x \cos x}{\sin x}\\
&=\frac{x}{\tan x}
\end{align}つまり、$$
\tan x = \frac{x}{f_0(x)}
$$です。
できた
はじめの目標であった、
- を設定し、を満たすことを示す。
- となることを示す。
ができたためランベルトの連分数を求めることができました!おめでとうございます。
記事にするには煩雑すぎる部分がかなり多くめっちゃ割愛しているので、ぜひ皆さんも自分の手で導出してみましょう。
おまけ
もうちょっと美しく
実はそれぞれの分数の分母分子をやで割ることで、正則連分数にすることができます。\begin{align}
\tan x &= \frac{1}{+\frac{1}{x}+\frac{1}{-\frac{3}{x}+\frac{1}{+\frac{5}{x}+\frac{1}{-\frac{7}{x}+\frac{1}{+\frac{9}{x}+\cdots}}}}}\\
&= \left[0;+\frac{1}{x},-\frac{3}{x},+\frac{5}{x},-\frac{7}{x},+\frac{9}{x}\right]
\end{align}
美しすぎて泣けてきますね
下降階乗冪をアレンジしたい
の中にあるでっかい分数ともうちょっと仲良くなりたいのですが、いかんせん掛けている数が1つおきなためなかなか手強そうです。
似たものとして、次のような下降階乗冪というものがあります。$$
x^\underline{n}=\underbrace{(x-0)(x-1)\cdots(x-(n-1))}_\text{n個}
$$から階段を1段ずつ下るようにして掛け算を行うというものです。
離散的なものと仲がいい、らしいです。
これの1段飛ばしバージョンとかあったらいいのになーとか思う今日この頃\begin{align}
10^{\underline{4}}&=\underbrace{10\cdot 9 \cdot 8 \cdot 7}_\text{4個}\\
10^{\underline{\underline{4}}}&=\underbrace{10\cdot 8 \cdot 6 \cdot 4}_\text{4個}\ \ \text{(1段飛ばし)}
\end{align}こんな感じ。
結局等差数列の一種だから公差で割ることで下降階乗冪に持ち込めそうだな。
こんどやってみよう。
*1:の場合、分子にあるでっかい分数は最初の値がを下回るため値はとしましょう。(を1と定義するノリ)