冪級数に憧れて

本日の主役は\ \log{(1+x)}\ さんです。こんにちは。

y=\log{(1+x)}\ を書くとこんなグラフになります。
f:id:canaan1008:20180228163008p:plain

彼には冪級数(べき級数)への憧れがありました。

冪級数とは、x^2+3x+2\ \ x^{50}-21x^{20}+x+1\ のように、xの冪乗の和(正確には無限和)で表されるものです。

前回の母関数も冪級数です。
canaan1008.hatenablog.com

果たして\ \log{(1+x)}\ さんを冪級数で表すとどのようになるのでしょうか?
実際にやってみましょう。

とりあえず置いてみる

冪級数で表されるとして、とりあえず次のように置いてみましょう。$$
\log{(1+x)} = a_0x^0+a_1x^1+a_2x^2+a_3x^3+\cdots
$$
x^nの係数がa_nということです。

すると、考えるべきことは次のような問になります。

問:\log{(1+x)}\ が$$
\log{(1+x)} = a_0x^0+a_1x^1+a_2x^2+a_3x^3+\cdots
$$と表されるとき、a_nの値は何になるか?

簡単なところから

a_0の値はすぐにわかりそうです。
x=0\ を代入してみます。$$
\log{(1+0)} = a_0
$$となるので、$$
a_0=0
$$です。

次の係数は?

$$
\log{(1+x)} = a_0x^0+a_1x^1+a_2x^2+a_3x^3+\cdots
$$の両辺をxで微分してみます。$$
\frac{1}{1+x} = 0+1\cdot a_1x^0+2\cdot a_2x^1+3\cdot a_3x^2+\cdots
$$これまで定数項だったa_0が消えて、代わりにa_1が定数項として現れました。可愛いですね(?)。

この状態で再び\ x=0\ を代入してみましょう。$$
\frac{1}{1+0}= 1\cdot a_1
$$となるので、$$
a_1=1
$$です。

で、a_nは?

\log(1+x)\ に限らず、f(x)が冪級数で次のように表されているとしましょう。$$
f(x) = a_0x^0+a_1x^1+a_2x^2+a_3x^3+\cdots
$$そして、この両辺をn回微分します。

すると、両辺辺はそれぞれこんな感じになります。(計算の詳細は省略します)$$
f^{(n)}(x)=n!a_n+(\text{$x$の式})
$$この右辺に注目!!!!!

  • a_0x^0+a_1x^1+\cdots +a_{n-1}x^{n-1}\ (n-1次まで)はn回微分すると消える(0になる)
  • a_nx^nの項はn回微分するとn!a_n(定数)になる
  • a_{n+1}x^{n+1}+a_{n+2}x^{n+2} +\cdots\ (n+1次以降)はn回微分してもxが残る

ここで\ x=0\ を代入しちゃいます。すると…\begin{align}
f^{(n)}(x)&=n!a_n+(\text{$x$の式})\\
f^{(n)}(0)&=n!a_n\\
a_n&=\frac{f^{(n)}(0)}{n!}
\end{align}

f(x)n回微分とそのときの\ x=0\ の値がわかれば、そこからa_nの値が求めることができるようです。
めでたしめでたし。

憧れの冪級数

\log(1+x)n回微分は、$$\frac{(-1)^{n+1}\cdot (n-1)!}{(1+x)^n}$$になります。
これより、n>0に対してa_nは\begin{align}
a_n&=\frac{(-1)^{n+1}\cdot (n-1)!}{(1+0)^n\cdot n!}\\
&=\frac{(-1)^{n+1}}{n}
\end{align}であることがわかりました。

a_0の値も考慮して元の式に代入すると$$
\log(1+x) = x-\frac{1}{2}x^2+\frac{1}{3}x^3-\frac{1}{4}x^4+-\cdots
$$となります。美しいですね〜〜〜〜〜〜

このように\ x=0\ を代入して求める展開のことをマクローリン展開と呼びます*1
最初の記事ではしれっと\sin x, \cos xのマクローリン展開をしていました。
canaan1008.hatenablog.com

*1:x=0\ に限らない展開はテイラー展開と呼びます。「xが○○の周りで展開すると、」みたいな感じで言ったりします。