ゼータ関数を勝手に拡張してみる

 \zeta_{a,b}(s)

今回の主役は、ゼータ関数さんです。早速登場していただきましょう。$$
\zeta(s)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^s}
$$前回の記事(下記リンク)では自然数の平方逆数和、つまり\zeta(2)を求めたわけですね。
canaan1008.hatenablog.com

前回扱ったように、ゼータ関数に出てくる項のうち、奇数番目、偶数番目の項だけを足すことを表す記号とかあったほうが面白そうじゃない?って思いました。
というわけで勝手に作りました*1

勝手に作ればいいのさ

たとえばこんな記法はどうでしょう。\begin{align}
\zeta_{\text{奇数}}(s)&=\sum\frac{1}{(\text{奇数})^s} \\
\zeta_{\text{偶数}}(s)&=\sum\frac{1}{(\text{偶数})^s} \\
\zeta_{\mathbb{N}}(s)&=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^s}
\end{align}最後の式は自然数\mathbb{N}全体で考えているので普通のゼータ関数と同じですね。
もうちょっと厳密に考えてみるとこんな記法が思い浮かびました。

 0\lt a,\> 0 \leqq b \lt aを満たす自然数a,bに対し、$$
\zeta_{a,b}(s)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{(an-b)^s}
$$と定義する*2
うん。楽しそう!
意味が通じそうなときは\zeta_{\text{奇数}}(s),\>\zeta_{\text{3の倍数}}(s)のように記述しても良いことにしましょう。

例えばこういうことです。
a=3,b=1の場合、\begin{align}
\zeta_{3,1}(s)&=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{(3n-1)^s}\\
&=\frac{1}{2^s}+\frac{1}{5^s}+\frac{1}{8^s}+\frac{1}{{11}^s}+\cdots
\end{align}分母が3n-1の形になっているものだけ足しましょうね〜ということです。

前回やっていたこと

前回扱ったのは平方(2乗)なので、s=2のときのゼータ関数になります。
わかったことを上の記法を使って書くと、次のようになりますね。\begin{align}
\zeta(2)&=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2}\\
&=\frac{1}{1^2}+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{3^2}+\frac{1}{4^2}+\cdots\\
&=\frac{\pi^2}{6}\\
\zeta_{\text{奇数}}(2)&=\frac{1}{1^2}+\frac{1}{3^2}+\frac{1}{5^2}+\frac{1}{7^2}+\cdots\\
&=\frac{\pi^2}{8}\\
\zeta_{\text{偶数}}(2)&=\frac{1}{2^2}+\frac{1}{4^2}+\frac{1}{6^2}+\frac{1}{8^2}+\cdots\\
&=\frac{\pi^2}{24}
\end{align}前回の導出方法や補足を思い返すと次のようなこともわかります。\begin{align}
\zeta(2)&=\zeta_{\text{奇数}}(2)+\zeta_{\text{偶数}}(2)\\
\zeta_{\text{偶数}}(2)&=\frac{1}{2^2}\cdot\zeta(2)\\
\zeta_{\text{奇数}}(2)&=3\cdot\zeta_{\text{偶数}}(2)
\end{align}なんだか……
美しい!!

成り立つであろう性質

一般的なs,a,bに関して考えても次のようなことは成り立ちそうです*3。$$
\zeta(s)=\sum_{b=0}^{a-1}\zeta_{a,b}(s)
$$自然数全体を奇数と偶数に分けたように、分母がan, an-1, an-2, \cdots, an-(a-1)の形になるそれぞれのグループに重複しないように分けたので、足し合わせれば元のゼータ関数に戻るよね、ということです。
\begin{align}
\zeta_{a,0}(s)&=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{(an)^s}\\
&=\frac{1}{a^s}\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^s}\\
&=\frac{1}{a^s}\zeta(s)
\end{align}b=0のときに限っては、各分母からa^sを持ってこれるよね、持ってくると残るのは元のゼータ関数だよね、ということです。
逆に言えば\zeta(s)から\zeta_{a,0}(s)を求めることができます。前回の補足でやった内容です。

気になること

b=0のときの値は元のゼータ関数から求めることができる(元の値が求まっていれば)が、b\neq 0のときの値は求まるのか…?
例えば、$$
\zeta_{3,2}(2)=\frac{1}{1^2}+\frac{1}{4^2}+\frac{1}{7^2}+\frac{1}{{10}^2}+\cdots\\
$$とか。

前回の内容の延長で考えたことなのでまだまだ研究中ですが、何か面白そうなことは絶対眠ってる気がする………(期待)

*1:まあ普通に先行研究としてありそうなんですが、自分でいろいろ見つけてみたいため敢えて調べてないです。

*2:なぜan+bではなくan-bなのかというと、b=0のときに初項が\frac{1}{a0}となってしまうためです。an+bという形にするためにはbの範囲を0\lt b \leq aとするか、b=0b\neq0nの動く範囲を変える必要がありそうです。ただこのようなあまりで分類するタイプでb=aを許すのが最高にモヤモヤするのでan-bを採用しました。

*3:一般的なゼータ関数ではsは複素数を動くそうですが、そんな心の余裕は無いのといきなり一般化しまくるのはしんどいので実数(強いて言うなら自然数)の範囲で考えます。ただ普通に複素数で考えても成り立ちそうな気はします。